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2010年5月 4日 (火)

[書籍] TPS (トヨタ生産方式) の参考書: 『偽りの「かんばん」』

アジャイル開発が話題になるにつれ、 リーン生産方式や TPS といった製造業の手法が、 ソフトウェア開発の文脈で語られることが多くなってきたなぁと感じています。 ところが、 「5S」 だの 「カンバン」 だのといった用語を上辺だけで語ってしまっているのじゃないか、 という事例にもよく出会う気がします。 たとえば、 5S を実施した結果、 机の上に何も置かないようにしてしまい、 常時使う本や書類をそのつど席を立って取りに行かねばならなくなった、 などというのは、 5S の目的を履き違えた典型的な過ちです。

TPS の用語を使うからには、 TPS について学んでいて欲しいと思います。 が、 バイブルと呼べる 「トヨタ生産方式 ― 脱規模の経営をめざして」 (大野耐一) は、 30年以上も昔の本ですし、 本屋でよく見かける解説書は、 表面的な TPS の実施方法のハウツー本ばかり。 そんな中、 この本を見つけました。

御社のトヨタ生産方式は、なぜ、うまくいかないのか? ~偽りの「かんばん」~』 (若井吉樹)

「カンバン方式を導入すると、 生産性が上がる」 のではなくて、 「生産性を上げる改善をトヨタ流にやっていくと、 カンバンが役に立つようになる」 ということが分かりやすく書かれています。 なぜ形だけ真似た 「TPS」 が失敗するのか、 なぜ本当の TPS が上手く行くのかを解説した入門書です。

TPS でのカンバンは、 この頃アジャイル界で使われだした 「カンバン」 とはまったく異なるものです。 TPS のカンバンには、 作る部品の名前 (正確には部品番号) が書かれていますが、 その部品の機能や作り方は明白なので書いてありません。 TPS のカンバンは、 同じものが何枚もあります。 TPS のカンバンの役割は、 書籍に挟んであってレジで回収されるスリップ (書籍注文カード) に似ています。

『偽りの「かんばん」』 から少し引用しておきます。

(p.4)
トヨタ方式を正しく理解しないまま、 生産現場に 「かんばん」 を導入して、 モノの 「つくり方」 を何も変えなければ、 現場は良くなるどころか、 かえって状況を悪くしかねません。 そもそも、 トヨタ方式とは 「流れるようにつくる」 モノのつくり方そのものであり、 かんばんはその一つの手段にすぎないのです。

製造業では生産性を上げるためのスローガンとして、 昔から 「三無主義」 が言われてきました。 といっても、 「無気力・無関心・無責任」 ではなく、 「ムリ・ムラ・ムダ」 を無くせ、 です。 この三無主義の実現方法として、 トヨタは 「流れるようにつくる」 モノのつくり方が良いと考え、 そのためにいろいろと改善を行っていく中でカンバン方式も生まれてきたわけです。

なお、 著者の若井吉樹氏は Web 上で、 「1日3分 生産管理リーディングマラソン」 という連載をされています。

 
( 2010/5/10 追記 ) InfoQ 『「かんばん」をソフトウェア開発に適用する: アジャイルからリーンへ 』 も、 ぜひお読みください。 平鍋健児氏 ( @hiranabe ) が 2008年に書かれた文章ですが、 TPS のかんばんとアジャイル開発のかんばんの両方を詳しく説明してくださっています。

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